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【コラム】俺の話を聞け! 三菱自動車燃費試験不正 問題について by 清水和夫

2016年6月12日

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shimizu
三菱自動車の燃費試験の不正問題が、意外な方向に展開している。そもそも2016年4月20日に、三菱が「燃費試験に不正があった」と公表したことで一連の混乱が始まった。

三菱は、「型式認証取得において、国土交通省へ提出した燃費試験データについて、燃費を実際よりも良く見せるため、不正な操作が行なわれていたことが判明した」と発表した。これは政府がメーカーに自主的な提出を求めていた実車試験に必要なデータに不正があったことを認めたものだ。

対象車両は軽自動車の「eKワゴン」「eKスペース」と、日産にOEM供給している軽自動車「デイズ」「デイズルークス」であるが、どのような不正が、そしてなぜ起きたのか。詳細な調査報告を待っているところだった。ところが事態は急転し、三菱は日産にから多額の出資を受ける!との発表があった。

三菱 報告

■何が起きたのか?

すぐに情報を収集するが、多くの人は寝耳に水で驚いていた。この段階では三菱が発表する内容のみが事実であり真実は分からないが、まずは事実に基づいて問題を整理してみる。

問題の軽自動車は三菱が開発生産する3代目「eKワゴン」で、背が高いワゴンとして、当時の軽自動車市場のトレンドに乗った商品であった。三菱が開発生産し「ekワゴン」の名前で市販されるが、いっぽう同じ形式モデルであるB11W型の外観だけを変更して日産にOEM供給し、「デイズ」の名前でも市販されていた。

■どんな不正だったのか

この3代目「eKワゴン」からは、三菱と日産が共同出資した合弁会社の「株式会社NMKV」が組織上は開発を担当するが、実務的には三菱自が開発を担当していた。責任を重く感じた三菱自の相川哲郎社長は国土交通省で記者会見し、軽自動車4車種で燃費試験時に不正を行なったことを認めたのである。

NMKV

フォルクスワーゲンのディーゼルスキャンダルと同じで、燃費測定実験は室内試験機(シャシーダイナモ)で行なわれている。国が立ち会う公的な試験であるが、コンピュータにインプットするクルマ固有の走行抵抗(空気抵抗や機械の摩擦抵抗、タイヤの転がり抵抗など)等のデータは、各自動車メーカーが実車で測定したデータを入力する。つまり、抵抗値として用いるその数値が甘いと、シャシーダイナモの試験結果は自ずと良くなる。

この問題は、日産からの指摘をうけ、三菱自社内で調査して発覚したと言われている。次期型軽自動車の開発は日産が主体となってNMKVで行なうことがすでに決まっていたが、それに先立ち現状市販されているモデルの燃費を改めて測定したところ、日産の試験ではどうしても公称値とされるデータが得られなかったのだ。

Okazaki

NMKVが商品企画を担当し、製品の開発を行なった三菱自動車・岡崎開発センター

それまで日産車として市販してきたデイズの製造は、三菱自なので相互認証していた。しかし日産は、三菱自に対して日産が行なうモード燃費と10%ほど乖離していることを指摘し、問題が発覚した。だがまっとうなエンジニアなら、タイヤの転がり抵抗と燃費の関係を知らないわけがない。転がり抵抗以外の不正があることは容易に想像できたはずだ。

■なぜ不正を働いたのか

ここからは私見になる。
燃費を誤魔化して認証を取得するなど、ユーザーと国に対する裏切りであり異常な行為と言わざるを得ない。それでも不正を行なったのには、どんな理由があったのだろうか。それは、近年の自動車ビジネスがあまりにもエコカーに偏重し過ぎたからだと想像できる。エコカーは同時に燃費による利害関係を生み、そうした傾向が一層顕著になってきたからではないだろうか。

ユーザーもクルマの購買動機の一番目に燃費を意識する。それほどまでに感心が高い燃費は、一番の宣伝材料である。そしてさらにカタログ数値として公表される燃費は、その数値を元にエコカー減税が与えられる。その政策に関して、私は昔から愚策だと指摘している。

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自動車技術総合機構の試験場内にあるシャシーダイナモ。排ガスを測定し、燃費を算出する

型式指定の審査を行なう自動車技術総合機構(NALTEC)の熊谷試験場

型式指定の審査を行なう自動車技術総合機構(NALTEC)の熊谷試験場


両モデルは2013年初頭から2016年3月末までの間、合計62万5000台を生産販売した。その内訳は三菱自のeKワゴンとeKスペースが15万7000台、日産のデイズとディズルークが46万8000台。意外なことに、なんと日産のほうが数多く販売していたのだ。最近の販売状況では日産の約40%が軽自動車なので、同社のダメージも計り知れない。

最大の問題は欧米が採用するメーカーの企業平均燃費CAFE(コーポレイト・アベレージ・フュエール・エコノミー)ではなく、車両重量ごとでセグメントするトップランナー方式をとっているからだ。早い話が重量3トンのSUVでもそのセグメントで燃費トップなら、ご利益がある。

しかしこの愚策とも思えるエコカー減税を取得できるかどうかが、クルマの販売に大きく影響するとメーカーの経営者は考えているのだ。エコカー減税対象車となれば、そうでないクルマに対しては強力なセールスポイントとして働き、一方の購入ユーザーは、支払う税金が少なくてすむから双方にメリットがある。相川社長は「(不正は)エンジンの開発部門の担当部長が行なった」としているが、フォルクスワーゲンのディーゼルスキャンダルと同じで、経営者は知らずに、部下がやったという責任逃れにしか聞こえてこない。

相川社長の言葉には嘘はないと思うが、理不尽な燃費競争を後押ししていたならば、法的な責任はなくても社会公益性の面からは責任は重い。エンジニアなら近年の燃費競争は「ユーザーのためでもなく、地球環境のためでもない」ことは理解できたはずだ。

メーカーにとっての公称燃費データは、社会や人のためではなく、販売台数向上のためのツールである傾向が強いと言わざるを得ない。個人的に気になるのは、三菱自の軽自動車生産の3分の2余りを購入するお得意さんである日産が、燃費性能をどこまで要求していたのだろうかという点だ。無論、燃費がいいに越したことはないだろうが、今後日産の話も聞いてみたいと思う。

■ルノー日産、カルロス・ゴーンの動き

カルロス・ゴーンCEOの動きは早かった。株価が急落したタイミングで三菱自の経営権を握る電撃的な資本提携が行なわれた。しかし、その後のカルロス・ゴーンCEOへのインタビューでは「あくでまも益子会長の支援要求に応じただけで、買収したつもりはない」と断言していた。

支援か買収かはともかくも、フランスの自動車メーカーであるルノー日産が三菱自の経営権を手に入れたことは間違いない。ただし、契約の詳しいオプションを見ると、新たな不正事実が発覚した場合は提携を白紙に戻せるという付帯条件を付けているのだ。このことからも、多少のリスクを承知の上で火中の栗を拾ったことになる。

そうなると、日産はいつから三菱自を傘下に収めることを考えていたのか疑念がわいてくる。が、結論から言えば報道の通り、今回の騒動を受けての決断だったようだ。

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2016年5月12日の夕刻に突如、日産と三菱の資本提携が発表され、カルロス・ゴーンCEOと益子修CEOが記者会見

■三菱と日産の絆

ただし、この絆が生まれた原点は合弁会社を立ち上げたのは2011年にある。このとき、国内の新車販売台数500万台のうち、半分が軽自動車、4分の1がハイブリッド車で、当時は簡単に言ってしまえば軽かハイブリッドでないとクルマは売れないと言われていた。

三菱自は軽自動車を持っていたが、90年代まで好調だった業績が低迷し、リコール隠し問題などもあって経営合理化が喫緊の課題だったと推測される。また、三菱自の軽自動車はミッドシップあり、FFありで、つまりバリ―ションからのコストもあり、儲けのわりに手間がかかっていたことも課題であっただろう。

一方の日産は、軽自動車もハイブリッド車も持っていなかった。グローバルに見れば軽自動車を一から手掛ける意味はないが、国内対策としては必要だった。かくして両社の思惑が一致し、両社は合弁会社NMKVを立ち上げ、軽自動車の開発に乗り出す。

■燃費目標を5回修正

当初の燃費目標は26.4km/Lだったが、その間に競合他社から燃費の良い軽自動車が続々と発表され、その都度、目標は上書きされていった。最終目標は29.2km/L。2年間で実に5回もの修正がなされたのだ。

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軽自動車とハイブリッド車が圧倒的な販売シェアを占めるなかで、経営トップが打ち出す目標値は「一番ありき」だった。これが開発現場に過度なプレッシャーを与えたことは言うまでもない。いま、経営トップは現場に責任を押し付け、現場はノーと言えない風土があったといわざるをえないのだ。スリーダイヤモンドのプライドはどこに行ったのか。法令順守は言わずもがな、今こそ企業の品格を考え直してほしい。

その提携発表後に相川社長と中尾副社長の辞任も相次いで発表され、益子会長は日産との提携が軌道に乗るまで会長権社長を続投する。

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