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俺の話を聞け!フォルクスワーゲン ディーゼル不正問題 ボッシュは無実だった by 清水和夫

2015年10月11日

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フォルクスワーゲンのディーゼル不正問題というショッキングな事件が起きてから、約一カ月が経とうとしている。さまざまな憶測が飛び交い、真実はなにか?不透明なままだ。国際モータージャーナリスト清水和夫氏が、最新の情報と事実を整理し、制御を作ったボッシュは無実であるというレポートを送ってきた。

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辞任してしまったたマルティン・ウィンターコルン元会長

フォルクスワーゲンのディーゼル不正問題が発生してからすでに一ヶ月が経った。正式にはアメリカ時間の2015年9月3日に、アメリカ政府は米国VW社に対して、排ガス試験で不正行為があったことを通告し、VWも法令違反を認めていた。実際にそのニュースが世界を駆け巡ったのはフランクフルトモーターショーのプレスディが終わってからのことであった。

VWが行なったディーゼル規制の不正行為とは、アメリカの排ガス規制の厳しさと、燃費と走りを両立させるために行なったのでは?と考えていた。法令で禁止されている「Defeat Device(無効化機能)」を使ってしまったのだ。さっそく、速攻レポートをweb上にアップしたが、その後からVWの地元欧州でも不正プログラムを使っていたことが判明した。アメリカだけでなく2009年頃から市販したのゴルフクラスのディーゼル車のすべてとなる約1100万台が対象となった。

◆事実を整理しよう

なぜアメリカからこの問題が起きたのか考えてみよう。2011年頃から欧州の環境保護のNGOやNPO団体からはディーゼル車の大気汚染が問題視されていた。欧州より厳しい排ガス規制を実施するアメリカでの実態を調べるために、ICCT(環境団体)はアメリカのウエストバージニア大学に資金を提供し、アメリカで市販されているディーゼル乗用車の排ガスの実態を調査させたのである。

問題のEA189型TDIエンジン

問題のEA189型TDIエンジン

このときはVWだけを調査したのではなく、ディーゼル車全体の実態調査だった。しかし、調査結果の中でVW製EA189型ディーゼルエンジンだけが、異常な数値を示した。調査結果では規制値の10倍から40倍も排出するクルマが見つかるが、規制値と実際の使用では乖離は必ず生じるものである。だが、40倍という数値に関係者は驚いたという。
結局、この大学のレポートが発端となり、カリフォルニア州の大気汚染監督局「CARB」と連邦政府の環境保護局「EPA」はVWに規制値を大幅に上回る排気ガス問題を通告していた。最終的には法令違反の「Defeat Device(無効化機能)の使用をVWが認め、ビッグニュースとなって世界を駆け巡ったのである。

問題の背景には日米欧の排ガス規制があると睨んでいた。1970年代に始まったカリフォルニア規制、いわゆるマスキー法で人体に有害な排出ガスが規制された。当時はロサンゼルスの空が光化学スモッグでどんよりと曇り、自動車が急速に増えたことによる公害問題として話題にあがっていた。このときホンダの創業者である本田宗一郎氏は「カリフォルニアの子供たちに青い空を取り戻す」という崇高な正義感から世界で初めてホンダがマスキー法(排ガス規制)をクリアした。シビックに採用したCVCCエンジンが青い空を取り戻したのだ。その後、トヨタや日産も追従し、日本車が北米市場では大人気となった。そのころからNOxと燃費(CO2)の低減が日本メーカーの最大の課題となっていった。

その後40年間、カリフォルニアの排ガス規制の厳しさは増し、2008年になるとついに世界一厳しい規制が施行されたのである。連邦政府もカリフォルニアと同様に厳しい新規制「Tier2Bin5」を施行した。このとき欧州はEURO5、日本はポスト新長期を施行するが、アメリカのNOxの規制値は日本と欧州よりも約2倍厳しかったのである。

◆どうやってNOxを除去するか?
ここで知っておくべきファクトは内燃エンジンの場合は、ガソリンだろうが、ディーゼルだろうか、完全燃焼するとNOxが発生しやすくなるので、NOxと燃費(CO2)の低減を両立させることは難しいのである。二律背反する事象をクリアするにはNOxを除去する触媒が必要となる。

日米欧の最新のディーゼル乗用車の排出ガス規制値テールルパイプ・エミッション比較(環境省)

日米欧の最新のディーゼル乗用車の排出ガス規制値テールルパイプ・エミッション比較(環境省)

ガソリンエンジンの場合は三元触媒という極めて優秀な触媒が利用できるので、NOxは連続的に低減可能。しかし、三元触媒は理論空燃比の領域だけで作用するので、薄く燃焼するディーゼルでは使えない。そこで他の手段が必要となる。

ディーゼルのNOx低減技術には白金を使うNOx吸蔵触媒と尿素SCR触媒の二種類が存在する。触媒以外ではEGR(排気ガスをシリンダー内に循環させる装置)という装置も優秀だ。専門家の話ではEGRだけで約90%のNOxが低減できるのだが、問題は燃費と走りが犠牲になりやすいということ。ディーゼルの最大のメリットであるトルクフルな走りと燃費が悪くなっては魅力は半減してしまう。触媒とEGRと組み合わせて燃費と走りが犠牲にならないようにNOx低減をバランスさせる。そこに高度な技術が必要となる。

このようにアメリカの法令違反ははなんとなく理解できるが、アメリカほど厳しくもなかった欧州ユーロ5規制でも法令違反した理由が理解できなかった。

もう一つの謎は実際にECU(コンピューターシステム)を作ってVWに納品しているのはボッシュだが、本件に関して違法行為はなかったのかどうかという疑問だった。しかし、アメリカ政府発表によるとボッシュは法令違反となる不正プログラムには関与していないと発表された。

「Defeat Device(無効化機能)」では室内試験を認識する機能が必要となる。例えばハンドル操作が行なわれていないとか、車体に加速Gが発生しないなどの事象がわかれば、室内試験だと認識可能だ。そのときだけ予め用意されたNOxだけを低減するモードに切り替えると規制はクリアし、実際の走行状態となったら、排ガス浄化装置を無効にする。これが「Defeat Device(無効化機能)」の実態だが、ボッシュが作ったソフトウェアにはトリックは存在しなかった。

ダイムラーやBMMのディーゼル車も同様のソフトを使っているが、実環境と室内試験を見分けるトリックは使っていない旨を発表している。これでボッシュの疑惑はなくなった。

いずれにしてもVWのディーゼル問題は多くの課題を残している。メディアはこうした問題が起きると感情輪が先行しやすい。気をつけなければいけないことは、事実と推測を混同しないことだ。次々と事実が明らかになる過程で憶測で物事を断定するのはとても危険だ。その意味ではボッシュに責任がないことが明らかになってよかったと思う。

何が起きてどんな影響があり、二次被害を防ぐにはどうすべきか。法的な責任追求は後でもいいような気がする。

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